小さなサメはカマストガリザメという種類で、ハンマーヘッドの半分ほどしかありません。
あえなく食べられてしまうのかと思いきや、そこには大型のハンマーヘッドを完璧に振り切っている姿が…。
フロリダ・アトランティック大学の研究によると、ここにはカマストガリザメの巧みな逃避テクニックが隠されているんです。
■敵をまくために「浅瀬」を利用
カマストガリザメは、成体でも全長1.5メートルほどで、決して大きくはありません。
普段はハンターとして、イカやタコ、小さな魚たちを捕食しますが、大型のサメに出くわすとたちまち追われる側になります。特に、広くて深い沖合は危険がつきものです。
そのためカマストガリザメは、浅瀬を一時的な子育ての場として使います。そこでは天敵に襲われるリスクが少なく、子供たちも狩りを学びながら安全に成長できるのです。
しかし、研究主任のスティーブン・カジウラ氏は「天敵をまくための場所として浅瀬を使う様子が確認されたのは今回が初めて」と言います。
また、ボートを使わないドローン撮影により、サメの動きに影響を与えることなく、自然な捕食・逃避行動の観察に成功しています。
■大型のサメは浅瀬で本領発揮できない
対するハンマーヘッドシャークは、全長5.5メートルと大きく、普段から小型のサメやエイを捕食しています。
今回もカマストガリザメの群れに出くわし、最高のご馳走を見つけたと思ったことでしょう。
しかし結果は、一匹も捕まえることができず、惨敗に終わったのです。
ここでカマストガリザメは、浜辺にほど近い浅瀬に入り込むことで敵をまく戦略をとっています。
これは、体の大きなハンマーヘッドが浅瀬では本領発揮できないことを巧みに利用したテクニックです。
ハンマーヘッドは、特徴的な縦長の背ビレを持っています。胸ビレよりもずっと長く、これを利用することで強い推進力を生み出します。
ところが、浅瀬では背ビレが水面上に出てしまうので、強みがまったく活かせません。浅瀬では、彼らの高い遊泳能力が奪われてしまうのです。
カマストガリザメは、本能的にそれを知っているのかもしれません。
結局、ハンマーヘッドは、浅瀬では捕らえきれないと見て襲撃をあきらめ、トボトボと沖合に帰っていきました。
自然界では、常に強者が弱者を食い物にします。小さな生き物たちは、力ではまったく太刀打ちできません。
しかし、自分に有利な土俵に持ち込むことで、弱点は一転してストロングポイントに変わるのです。
カマストガリザメは、そんな「柔よく剛を制す」の精神を私たちに教えてくれているのでないでしょうか。
研究の詳細は、4月9日付けで「Journal of Fish Biology」に掲載されています。
Can’t Touch This! Video Shows Blacktip Sharks Use Shallow Water to Flee …
https://youtu.be/jhfu38EcQ5Q
https://nazology.net/archives/59897