ウミアメンボは、昆虫でありながら、海への進出を成功させた数少ない生物です。
昆虫は地球上で最も繁栄しているにもかかわらず、海に活動範囲を広げることはありません。魚や海鳥などの天敵、荒波、太陽の直射など、海は小さな昆虫にとって危険すぎるのです。
では、ウミアメンボはなぜ海に適応できたのでしょうか。
今回、キング・アブドゥラー科学技術大学(サウジアラビア)の最新研究により、海上での生存を可能にする驚異の身体能力が明らかにされました。
■水没を防ぐ体毛メカニズム
研究チームは、アラビア半島とアフリカ北東部に挟まれた「紅海」で採取した2種のウミアメンボ(Halobates germanus、Halobates hayanus)を調査しました。
ウミアメンボは非常に小柄で、胴体の直径は3.4ミリ、横幅は1.8ミリしかありません。
チームは、ハイスピードカメラと電子顕微鏡を用いて、ウミアメンボの体毛を調べました。
すると、体毛の形や長さ、直径が、体の部位ごとに違っていたのです。特に脚部では、毛先がゴルフクラブのように湾曲しており、毛と毛の間に水が入らない作りになっていました。
また、湾曲した体毛が密に詰まっていることで、中に空気をため込んでおけるので、アクシデントで水没しても、全身を包むようにバブルが作られ、水上に再浮上できるのです。
実験でウミアメンボに水滴を落としたところ、体毛がそのすべてを弾いてました。
■加速度はウサイン・ボルトの100倍以上!
さらにウミアメンボは、体から撥水効果を持つワックス状物質を分泌していました。
それを体表面にコーティングすることで、体が水を吸わないようにしていたのです。
また、静止状態において、水面に接している脚の面積は、全体の5%以下にとどまっていました。
移動のメカニズムに関しては、水面上を歩くというレベルを超えて、空中をホバリングする形に近いことが分かっています。
ウミアメンボは、水面をトランポリンのような跳躍台として使い、巧みに飛び跳ねていました。それから、柔軟な脚を用いて、後退移動や方向転換もラクラクとこなしています。
さらに、ウミアメンボの凄さは、それだけにとどまりません。
彼らの一番の強みは俊敏性にあり、加速度を計算してみると、なんと400m/s2(メートル毎秒・毎秒)に達していたのです。
1m/s2は、1秒ごとに1メートル毎秒ずつ加速することを表します。あの人類最速のウサイン・ボルトですら約3m/s2ですから、ウミアメンボの恐ろしさが垣間見えます。
ただし、これはウミアメンボの小さなサイズを考慮した上での俊敏性なので、実際の競争ではボルトの圧勝に終わるでしょう。
それでもウミアメンボは、独自の防水性と俊敏性によって、過酷な海を生き抜いています。
この他にも、小さな体を生かして天敵が入り込めない隙間に隠れたり、岩場の影を利用して太陽光の直射を避けたりと、色々なテクニックを使っているでしょう。
力は弱くても、自分の強みを活かすことで力強く生きているのです。
研究の詳細は、5月8日付けで「Scientific Reports」に掲載されました。
https://nazology.net/archives/60280
実際に人間サイズだったら自重で潰れて死ぬだけだけど
死にかけて浮いてる海洋生物から吸汁・吸血する
稀に海水浴中の人間の血も吸うという話が
そして胴体が妙に短くて丸い